高校生の提言から生まれた
アスタキサンチン入り卵「壮健美卵」
CO2からバームクーヘンへの旅

 

 強力な抗酸化成分「アスタキサンチン」を含む「壮健美卵」。さが藻類バイオマス協議会会員である㈲ムーラン・ルージュと㈱アルビータがコラボして作り出したこの卵は、弘学館高校生の佐賀市への政策提言がきっかけで生まれました。佐賀市が持つ二酸化炭素利活用の技術を生かして佐賀をアピールする物を作りたいという発想が、出発点でした。

■誕生までの道のり

▽弘学館高校生の提案
 弘学館高校生の提言は、もともと日本青年会議所(JC)佐賀ブロック協議会が主催する政策提言コンテストで最優秀賞になったもの。佐賀市清掃工場由来の二酸化炭素を使って藻類を培養し、これを餌に有明海の固有種「ムツゴロウ」を育てて食材として普及させようという内容でした。高校生は以前に佐賀市清掃工場の二酸化炭素分離回収施設を見学したことがあり、「人類の敵になっている二酸化炭素の産業活用技術を持っているのは佐賀市だけ。佐賀にしなかないものを合わせれば世界にアピールできる」と考えたのです。

佐賀市と協議会が橋渡し

 ただ、ムツゴロウは養殖魚ではありません。そこで提言を受けた佐賀市は、さが藻類バイオマス協議会と相談し、藻類を家畜の飼料とすることを考えました。アスタキサンチンを含有する卵が市場で高価格で流通していることを踏まえて、菓子用の卵を得るために自社で養鶏を行っているムーラン・ルージュ社に、アスタキサンチンを生成する藻類ヘマトコッカスを鶏の餌にすることを提案。佐賀市清掃工場の排ガスから分離回収した二酸化炭素を使ってアルビータ社が培養しているヘマトコッカスを与えることになりました。

ムーラン・ルージュのチャレンジ

 かねてから地元資材を使って高付加価値の卵を作りたいと考えていたムーラン・ルージュ社は、提案を受けてさっそく試験的にヘマトコッカスを飼料に加えました。その結果、この餌を食べた鶏たちは、鮮やかなオレンジ色の黄身が盛り上がった卵を産みました。同社は、この卵を分析して黄身にアスタキサンチンが移行していることを確認。健康によい卵「壮健美卵」として売り出しました。さらにこの卵を使った卵かけご飯の専門店もオープン。バウムクーヘンも商品化しました。

背景に佐賀市のバイオマス事業

今回の取組は、佐賀市のバイオマス事業がバックグラウンドになっています。これは廃棄物を資源として活用する資源循環型の社会をつくろうという試みで、ごみ焼却の排ガスから二酸化炭素を分離回収して産業に利用する二酸化炭素利活用事業(CCU)は、その中心的な事業です。ヘマトコッカスを培養するアルビータ社が佐賀市に進出したのも、このCCUがあったから。つまり二酸化炭素は「壮健美卵」の生みの親となっているのです。

「脱炭素」の潮流を受けてメディアも注目 

 世界的な脱炭素の流れの中で、二酸化炭素を利活用して健康にいい卵を生み出す、このユニークな取組はメディアの注目を浴びています。
 福岡のRKB毎日放送が夕方の情報・ニュース番組「タダイマ」で取り上げたのを皮切りに、地元STSサガテレビの情報番組「かちかちPress」、TBSの朝のワイドショー「あさチャン!」、日本テレビ「news zero」が配信するオンライン番組「Update the World」などで取り上げらています。